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名まえです」
「おとうさんのお知り合いでしょうか」
「いいえ、おとうさんのお知り合いなら、みんなおかあさんが知っています。いままで一度もおとうさんから、そんなお名まえをうかがったことはありませんよ」
文彥とおかあさんは、そこでまただまって顔を見合わせてしまった。前にもいったように、文彥のおかあさんというひとは、舞臺に立っていたことがあるだけに、年より若く見え、いまはかぜをひいて多少やつれてはいるものの、たいへんきれいなひとだった。
そのきれいなおかあさんが、なにか気にかかることがあるらしく、心配そうにわなわなと、くちびるをふるわせているのが、文彥にはなんとなくみょうに思われてならなかった。
「おかあさん、ぼく、いってきましょうか」
「いくってどこへ……?」
「大野健蔵さんというひとのところへ……」
「そ、そんなあぶないこと……相手がどんなひとだかわかりもしないのに……」
「だって、テレビを見ていながら、だまっているのは悪いでしょう。ぼく、いってきます。だいじょうぶですよ。むこうへいってみて、なにかいやなことがありそうだったら、なかへはいらずに帰ってきます。それならいいでしょう」
文彥はもうすっかり決心をしていた。
少年はだれしも冒険心や、まだ見ぬ世界にあこがれる強い好奇心を持っているものだが、文彥もやっぱりそのとおりだった。
だからその日、文彥はテレビのたずねびとを知ると、やもたてもたまらなくなり、心配してひきとめるおかあさんを、いろいろとなだめて、とうとう成城の大野健蔵というひとをたずねていくことになった。
成城には友だちがいるので、まえに二、三度擼Г嬰摔�郡長趣�ⅳ搿¥餞欷思窯虺訾毪蓼à恕⒌貒恧蛘{べてきたので、一〇一七番地というあたりも、だいたい見當がついていた。
小田急の成城駅で電車をおりて、駅の北側出口から外へ出ると、そこにはいかにも學校町らしい、おちついた桜並木の、|舗《ほ》|裝《そう》|道《どう》|路《ろ》がつづいていた。桜並木のサクラはいまそろそろひらきかけているところだった。その道を十分くらい步いていくと、きゅうに家がとだえて、その先は、さびしい|武蔵《む さ し》|野《の》の景色がひろがっている。畑にはムギがあおみ、空にはヒバリがさえずっていた。そして、あちこちに點々として見えるのは、|雑《ぞう》|木《き》林にとりかこまれたワラぶきの家。
文彥はきゅうに心細くなってきた。じぶんがこれからたずねていこうという家は、こんなさびしいところにあるのだろうか……。
まえに二、三度、成城へ擼Г嬰摔�郡長趣韋ⅳ胛難澶稀⒊沙扦趣いà猩掀筏省⒏嘸壼≌�證坤趣肖�晁激盲皮い俊¥餞筏啤ⅳ餞長俗·螭扦い氪笠敖∈iというひとの家も、そういう邸宅の一つだろうとばかり思いこんでいたのである。
ところが、そういう住宅街には一〇〇〇臺の番地の家はなく、一〇一七番地といえば、どうしてもこのさびしい、ムギ畑と雑木林の奧にあることになるのだ。
文彥はポケットから、もう一度地図をだして眨�伽皮撙郡�ⅳ浹盲絢轆餞Δ坤盲俊4笠敖∈iというひとの住んでいる一〇一七番地は、どうしてもこのさびしい、武蔵野の奧にあることになるのである。
文彥は勇気のある少年だったが、さすがにちょっとためらわずにはいられなかった。よっぽどそこからひきかえそうかと思ったが、そのときだった。だしぬけにうしろから、
「坊っちゃん、坊っちゃん、ちょっとおたずねいたしますが……」
と、しゃがれた聲をかけた者がある。
文彥はなにげなく、そのほうをふりかえったが、そのとたん、冷たい水でもぶっかけられたように気味の悪さを感じたのだった。
そのひとはおばあさんだった。しかし、ふつうのおばあさんではなく、なんともいいようのないほど、気味の悪いおばあさんなのである。きみたちもきっと西洋のおとぎばなしのさし劍�恰⒁獾丐螑櫎つХㄊ工い韋�肖ⅳ丹螭謂}を見たことがあるだろう。
いま、